伝説の『浪人荘新聞』webにて復活!
by roninso
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浪人荘新聞  第5号  「おりば」
「おりば」
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 JRの大阪駅を降りたところすぐに、この「おりば」はある。朝のラッシュ時の、乗車と下車の混雑を避けて作られたおりば専用のバス停。朝のラッシュが終わってからは、ここに到着する人は一人もいない。朝一番、仕事を終えた「おりば」は次の日の朝までただそこに立って、忙しい人の流れを見ている。静まることのないエンジン音。絶えることのない人ごみの足音。roninsoがたまたま横を通りかかったときも、何の会釈もせず、「おりば」はぼーっと夕日を眺めていた。排気ガスでよごれた顔を拭いてくれる人間は誰もいない。「のりば」のように、時おり真剣なまなざしで行き先を尋ねられることもない。ただ、「おりば」とかかれたその場所は、そこで降りるだけの存在で、決してそこが目的地ではない。 なんか、人ごみで一人可哀想だったので、ちょっと話しかけてみた。
 
「こんにちは。まぶしいなぁ~。」
「そうですねぇ。こんにちは。」
「あ、、こんちわぁ、、。」
「こんにちは。 この時期はちょうど西南西のあの広い空き地の向こうへ沈んでいくんですよ。ほら、右の方にスカイビルが見えるでしょう?あそこの窓ガラスにオレンジ色が反射して綺麗な夕焼けが見られるんです。あんな夕焼けはこんな都会でないと見られない景色ですね。」
「あぁ、、ほんまやぁ、、なんか綺麗ですね。でも、ここの歩道、、ものすごい人、、。」
「そうですねぇ。みなさん、忙しそうに歩いていきますよ。でも見てください。」
「えっ、、あ、、はい、、。」
「ほら、あそこ。道路の向かい側にある、大きなビルから出てこられる人たちを。スーツを着たサラリーマンもいらっしゃいますし、土日祝日は、家族連れの方たちもたくさん見えるんですよ。そこで、信号待ちをしているときの、ただ何をするでもなく待っているそんな時間があるんです。その信号待ちを私はいつも観察していて、一人楽しんでいるです。」
「へぇ、、なんかいろんな人がいておもしろそうですねぇ」
「そうですね。ほんとにいろんな人がいますよ。人間観察が好きなんです。だからこの仕事に向いてるのかな。」
「そうなんですねぇ、、。僕も人間観察好きです!今日はどんな人がいましたか?」
「そうですねぇ~、、今日はユニークなホームレスの方がいましたね。」
「へぇ、、どんな?」
「信号待ちをしていたんです。でもね、青になっても渡らないんです。ただそこに立っているだけなんです。はじめは、どうしたのかな?と思って、見ていたんですが、、ちょっと心配にもなって。だけどね、違ったんです。彼もね、人間観察をしていたんですよ。」
「へぇ、、でもなんか信号渡らないのに信号待ちしてるのって、へんですよねぇ、、ちょっときもちわるいかも、、。」
「えぇ、、それもたしかにあります。だけど、信号が赤のときに渡っちゃいけないっていう法律はあるけれど、青になったら必ず渡らなければならない。っていう法律はないですもんね。歩行者場合。」
「あぁ、、確かにそうかも。車だったら青になったら速やかに発進しないと後ろに迷惑だけど、歩行者の場合、そうでもないかも。」
「そうなんです。そんなわけもあって、しばらく彼を見ていたら、信号が青になったときに、彼の体が小刻みに揺れるのを発見したんです。」
「えぇ、、なんで、、なにしてたんすか?」
「それがねぇ、、向こう側から渡ってくる人の横断歩道を渡る歩数を数えていたんですよ。」
「えぇ、、、なんじゃそら、、、。」
「そう、、でもね、ホームレスのそのおじいさん。それだけじゃないんですよ。信号が青から赤に変わるまでの秒数も数えてたんです。そして、歩道を何歩で渡れるかを数えて、何度かそれを繰り返してたんですね。タイトスカートをはいた女の人はやっぱり歩数が多くなるし、急いでるサラリーマンは大またで駆け抜けていくし、、。いろいろ平均を出すかのように、いろんな人の歩数を数えていたんですよ。そしてね、一時間くらいはそうやってたかなぁ、、。おじさん、満を持して信号が青になった瞬間、そっと一歩を前に出したんですね。そして、ちょうど、35歩で横断歩道を渡り終え、そしてクルッと回転して、また35歩で横断歩道を往復してきたんです。それも、ゆっくりと、一秒に一歩ずつ。 そう、、一歩が1秒で、往復70歩で帰ってきたんです。それが、本当にぴったりだったので、私も驚いたのですが、そのおじさん。渡り終えたときに、「よっしゃ。」と、、小さくつぶやいて、またそのままの足取りでよぼよぼと、どこかに歩いていったんですよ。」
「へぇ、、ほんとにいろんな人がいるんですねぇ、、。一日そうやって人間観察をしていたら本当におもしろいかも。」
「えぇ、、おかしな人もいますしね。」
「うん、、。あ、、あの、、一枚撮らせてもらってもいいですか?」
「えぇ。結構ですよ。」
「あ、、ありがとうございます。」
「綺麗にとってくださいね。私の好きな夕日もいれて。」
「あ、、はい。」

僕はすっと手に持っているローライを構えた。夕日がまぶしかったが、ローライの暗いファインダーにはちょうどよかった。

シャ・・。

日は傾き、梅田の最後の一等地である「空き地」に、沈もうとしていた。それを、だまってただ、ぼーっと見ていた。 

 
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by roninso | 2005-10-25 01:01 | 浪人荘新聞
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